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| パラメディック119>救急救命士の現実>消防に入った新しい血 | Last up 2007.1.18 |
救急救命士たちの現実消防に入った新しい血消防署って職場はちょっと特殊な環境にあります。警防隊員(とくに消防隊員、救急隊員、救助隊員、はしご隊員など災害に緊急出動する隊員たち)は24時間、朝から次の日の朝まで寝食を共にします。コンビニエンスストアなんて便利なものができるずっとずっと前から24時間365日常に営業している住民のための元祖24時間サービスです。消防官なら当たり前ですが、土曜も日曜も関係ない職業です。私も含めてですが、こう言った特殊な勤務サイクルの職業にいますと、なかなか他の職種の方とに付き合いが希薄になりかちです。もちろんそうじゃない方もいますが、そうなりがちな職業であるのが現実です。消防で当たり前と思われている常識も実は社会じゃ全然常識じゃない、むしろ非常識なんてこともあります。 さらに常識が実は非常識という要因を生むひとつの要因が「火消しの独占」です。電化製品を作っている会社、自動車を作っている会社、みなさんもいくつも挙げられるのではないでしょうか?ではあなたの家が火事になった時、消火してくれるのは?消防車、119番すると言うのではないでしょうか?本当に一部の例外を除き火災発生時、消火に当たるのは消防官、消防署の仕事です。私たち消防官は火災の時、住民の唯一頼るべき存在と言っても過言ではないはずです、なんてったってライバルがいませんから。他にノウハウを持っている組織が存在しないだけに火消しの方法、伝統は消防官たちが研究し、消防官たちが先輩から後輩へと引き継いできた尊い伝統です。私たち消防官はこの伝統をとても重んじ大切にしています。 消防って言えば消火活動、今でもやっぱりそのイメージが一番強い。実際、消防が救急活動を担うと言うのは法的に明文化されたのも消防署ができるずっとずっと後のことで消防の仕事のおまけ的存在でした。ところが、時代は進み木造建築の建物は減り、コンクリート耐火造の建物が増えた。スプリンクラーなどの消火設備も整い火災が減っていく中、それとは反対に高齢化社会、モラルの低下などで増え続ける救急要請、主役であった消防車の出場よりも、おまけであった救急車の出場が圧倒的に増えてしまいました。こんな矛盾を抱えつつも、救命率向上、もっと現場でできる処置をと平成3年に救急救命士制度が制定、これまで医師でなければ行えなかった処置が救急隊員にも認められるようになりました。 これまでも救急隊員の活動に対して活動基準の制定やアドバイスなどはもちろん医師など専門家たちの意見が大いに生きていました。それでも救急隊員たちも消防官です。救急現場でのやり方、処置などは先輩たちから引き継がれた伝統で支えられていたところがとても大きかったのです。しかし、それも救急救命士制度制定を機会に大きく変わることとなりました。救急救命士は国家資格、行う業務は「診療の補助」、従わなければならないのは医学的根拠、医師の具体的指示、これまで独占であった消防の世界に医学という「新しい血」が入ってきた訳です。 私は救急隊員ですから救急の仕事に肩入れする部分があるかもしれませんが、消防の仕事の中で圧倒的なスピードで進歩しているのが救急業務だと思います。今でも独占の火消しの業務に対して、救急業務はもはや消防だけの仕事ではなくなってしまった。医学の血が入り、また医学は日進月歩進歩しています。これまで良かれと思ってきた伝統も「その根拠を示す論文がない」と却下され、新しい根拠が大いに取り込まれていく。救急車を数年降りると「浦島太郎状態」になってしまいます。救急業務に従事する者たちは救急救命士たちを中心に日進月歩進歩する医学の血を吸収するため努力をし続けなければなりません。 医学の根拠が大変強く影響を与える救急業務。先輩たちが築き上げた伝統に、さらに医学の血が入るようになりました。これまでの伝統が否定されることもありますが、日進月歩進歩する新しい根拠をどんどん積極的に導入する新しい伝統が育ちつつあります。私は現在、救急こそが消防の仕事の中で、最も変化を恐れず住民のために働ける業務だと思っています。この流れについていくのはとてもたいへんで、快く思っていない救急隊の者がいるのも事実です。それでもこの流れは変わらないでしょう。ここ数年だけで医師の事前指示除細動、気管挿菅、さらには薬剤投与と数年前では考えられない処置が可能になってきています。これからもどんどん進んでいくことでしょう。 独占業務であった消防の仕事も外部からの影響を多大に受けるようになりました。10年一昔なんて言いますがその言葉こそがまさに10年前の話、医学は「昨日の常識が今日の非常識」の世界です。ただ、今までではあり得なかったこのめまぐるしい変化に消防全体がついていっているかといえば実はそうでもないのが現実です。医学の影響を多大に受ける救急業務、この新しい血が実は消防の世界にギャップを生んでいるのかもしれません。 世の中の変化に対応するために、これまでの伝統にとらわれることなくどんどん改善すべきことは改善しようとする消防官、そんなことをされたくない変化を好まない消防官、特に最近、消防の世界にいてこの両極を感じます。時代が変われば組織も変わらなくてはいけません。住民のニーズが変わるなら、私たち消防官も柔軟にそれに対応しなくてはいけません。消防官は住民のためにいるのですから。消防の伝統は誰のためにというお話ではそうは思いつつもなかなかそうはなれない現実について書きたい思います。 この記事へのご意見・ご感想、追加、修正などなどをお寄せください。パラメディック119ブログ版・救急救命士の待機室にコメントを残すことができます。
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